2026-04-24

やっぱり master のまま

まだその呼び方がただの技術用語だった頃に、MySQL の master/slave レプリケーションを組んでいた時期がある。git checkout master と 打つのも、それがデフォルトだった頃からの手癖だ。古いのは自覚して いる。

「master」という言葉にひっかかる人がいるのは理解しているし、軽く 扱うつもりもない。名前は意味を持つ。MySQL が source/replica に 切り替えたのは筋が通っている。元のペアが master/slave で、その 片方が明らかに不愉快な語だったのだから、両方まとめて置き換える のは自然な判断だ。組み合わせとしてはちょっと耳慣れないが、 理屈はまっすぐだ。

git はそもそも形が違う。slave ブランチなど存在しない。過去にも なかった。git の master は誰かを支配する側ではなく、家の主と いう意味に近い。録音の「マスターコピー」や、合鍵に対する 「マスターキー」と同じ master だ。main に置き換えても、言葉が 付いていた相手がいないので、ただ単語が入れ替わっているだけに なる。

インクルージョンを理由にするなら、足し算引き算はきちんとして おきたい。アメリカで奴隷制が廃止されたのは 1865 年。master という語が今も帯びている重さは、その歴史と、その後に長く残った スティグマに由来する。そこには敬意を払うべきだ。ただし、2021 年の改名によって守られているのは、実際に奴隷にされていた人々 ではない。

一方で「master」は、今も肯定的な意味で生きている文脈がいくら でもある。メイド喫茶は「ご主人様」——まさに master ——から始まる し、それ自体が足を運ぶ理由の一部になっている。メイドは奴隷では ない。ルールの中で給仕をしているだけで、多くは衣装やその役柄 自体を楽しんで働いている。否定的な要素はどこにもない。そういう ジャンルのアニメが好きな人——メイド喫茶に行ったことがない人も 含めて——は、master を同じように良い意味で使っている。パートナー や友人と合意の上でこの手の役柄を楽しんでいる人たちも同じだ。

もうその場にいないグループを「含める」ために、たくさんの生きて いる人が気持ちよく使っている言葉を上書きするのは、本当の意味の インクルージョンとは言えない。取引だ。しかも、関係している全員 に意見を聞いたうえで決まった取引でもない。

main に反対しているわけではない。ただ、名前を変えただけで何か が直ったふりをするのが気に入らない。私のリポジトリは、打ち直す 理由がはっきり出るまで、これからも master のままだ。